生体調節機能とポリフェノール
ポリフェノールで知る食品の「三次機能」 |
従来、栄養という面から生命の維持や成長、活動、健康の維持に不可欠な食品の成分の研究がなされてきました。その結果、新しいビタミンの発見やミネラルの中でも特に微量元素の役割などが解明されてきました。
ところが五大栄養素や食物繊維には入らないさまざまな食品中の成分が、健康の維持や病気の予防、治療に効果を発揮することがわかってきました。
たとえば、ひと頃マスコミをにぎわしたポリフェノール類はその代表です。赤ワインに含まれるアントシアニンやカテキンなどのポリフェノールは、活性酸素と結合してがんの予防や老化の防止に効果があることがわかってきました。このことがテレビで放映された直後、赤ワインが飛ぶように売れたことは、覚えている人も多いでしょう。
ポリフェノール類はこのほかに、大豆に含まれるイソフラボンやかんきつ類のフラボノイドなどがあります。これらの有効成分は栄養素ではありません。そこで食品の三次機能として、生体調節機能と名づけられ、食品の持つ重要な役割として一般にも認識されるようになったのです。
生体調節機能は病気の予防に働くという意味ですが、具体的には生体のリズムの調整や免疫の調節、神経のバランスなどを正常に保つ機能のことです。それらの働きを持つ成分のことを機能性成分といいます。
新しい概念、ファイトケミカル |
生活習慣病の予防に役立つ機能性成分を持った食品は、研究が進むとともに次々とその効果が公表されています。その中で圧倒的に多いのが野菜です。その効果も血圧を下げたり、血液をさらさらにしたり、コレステロールを低下させたり、がんを予防したり、疲労を回復させたり、病原菌を抑制したりと、多岐にわたっています。
そこでこれらの病気と戦う野菜の成分を総称してファイトケミカルと呼んでいます。「ファイト」は戦うという意味ではなく、植物(phyto)の意味です。動物のように動き回れない植物は、太陽光線や虫などさまざまな脅威にさらされており、植物独自の代謝によって自らを守っています。ファイトケミカルは、植物のもつさまざまな色素を構成する物質です。
先ほどの赤ワインもぶどうの色素ですし、なすやカボチャ、しそ、トマト、リンゴ、みかんなどに含まれる機能性成分も色素です。野菜類はビタミンやミネラルばかりでなく、ファイトケミカルの宝庫なのです。ファイトケミカルは主に抗酸化作用のあるのが特徴です。
ポリフェノールへの誤解と過剰な期待について最近はポリフェノールについてあまり騒がれなくなりましたが、かえって一般に誤解されたままでいる恐れがあります。第一にポリフェノールは多数(ポリ)のフェノールという物質を持った化合物の総称で、単体を意味するものではありません。その種類は5千種類ともいわれており、カテキン、タンニン、イソフラボン、アントシアニンなどはそのほんの一部に過ぎないのです。 また、ポリフェノールは赤ワインやブルーベリー、ココアなどに多く含まれているというイメージがありますが、その他にも色の濃い野菜、果物に多く含まれており、植物でポリフェノールを含まないものは存在しないとさえいわれています。 植物は病害虫や細菌類、太陽光線などにさらされているので、自分の身を守るためにポリフェノールでそれを防いでいると考えられています。果物の皮の部分に色素が集まっているのもそのためです。 ポリフェノールが「体によい」のは抗酸化作用があるからとされますが、まだその仕組みが解明されたとはいいがたく、学問的にはそのほんの一部の物質の働きが少しずつわかってきたというレベルです。 ちなみに、ブルーベリーに多く含まれるアントシアニンが眼によいというのは、根拠がないようです(国立健康・栄養研究所の見解)。 マスメディアに煽られてポリフェノール類に過大な期待をするのは考え物です。過剰摂取の副作用さえまだ明らかになっていないのですから…。 ただし、色の濃い野菜や果物を毎日しっかり食べることは、生体調節機能を別としても、栄養学的にはきわめて大切なことです。 |