生活習慣病の原因と予防法
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医食同源、未病の考え方と薬膳料理

温故知新。科学的にも証明された「医食同源」の数々

 日本人はその昔、栄養の知識などろくにない頃から、胃がもたれたときは大根おろしを食べるとか、疲れたらレモンをかじるなど、食品の持つ栄養素以外の効果を知っていました。

 西洋にも「トマトが赤くなると医者が青くなる」ということわざがあるように、人類はその長い歴史の中で、身近な食物の持つ薬学的な効果を経験的に知っていたといえるでしょう。

 ただし経験的にはかなり高い確度で正しいとしても、化学的・生理学的に効能物質が突き止められてその仕組みがわかるまでは、科学的ではないという理由で軽視されてきた面もあります。ときには「迷信」扱いされてきた生体機能食品も少なくないでしょう。

 近年の著しい研究成果で、昔からの言い伝えが正しいと証明された健康によい食品が数多く「発見」されました。まさに温故知新ですね。

薬食同源と薬膳

 日常の食品を薬と考える思想は、漢方の国、中国で古代から発展してきました。

 古代中国、周の時代には王の食事治療専門医がいました。しかもその医師は他の専門医よりも上位にランクされていたようです。「神農本草経」という当時の書物には、穀物や野菜、魚貝などの薬物治療に使われない食品についても効能が記載されています。その根本にあるのは食事と薬は同じであるという考え方です。そこから薬食同源という言葉が生まれました。

 医食同源は1970年代前半に、薬食同源の替わりの言葉として紹介された日本での造語ですが、今世紀に入って急速に一般に浸透してきました。今日の健康ブームを象徴する言葉といえるでしょう。

 その医食同源の思想を実践し、考案された料理が薬膳です。本来の薬膳は、漢方薬としてなじみの食材も使われますが、それだけでなく日常の食材のもつ効能をうまく組み合わせてバランスよく相乗効果を上げるところに妙があります。

 また、最近は和食も取り入れた、中華料理とはまったく趣の違う薬膳料理も多くなってきました。素材の持つ効能をうまく生かせば、普通の家庭料理でも立派に薬膳料理になるということです。

西洋医学と東洋医学の違い

 古くさいイメージだった漢方が今、見直されています。日本では漢方薬でおなじみの東洋医学は、西洋医学とどう違うのでしょうか。

 西洋医学は、物質と精神を別物として扱うキリスト教的世界観と、徹底した合理主義を背景に、解剖学を基礎とした実証主義と分析的手法で高度に発展してきました。西洋医学では病気をからだの部分の問題として扱います。もっぱら身体の悪いところを直す、いわば対症療法が中心です。どうしても直らなければ悪い部分を摘出してしまう、という考え方のできる医学です。

 一方、東洋医学は人間の体を宇宙や自然になぞらえて考えます。東洋医学の基本概念に陰陽五行説というものがありますが、これは自然界の光と影を「陰と陽」で、また植物、熱、鉱物、土壌、液体を「木、火、金、土、水」の五行で表現したものです。こうした思想に基づいて発展してきた東洋医学は、現代の医学から見れば一部に不合理な面も見られますが、人間を哲学的、総合的に把握し、臨床的、内科的に対処するという基本姿勢は、西洋医学の苦手な分野を補う大きな可能性を持っています。

未病と異病同治

 漢方と西洋医学の違いを端的に表す言葉に、未病という概念があります。未病とは読んで字の如し、いまだ病気になっていないという意味ですが、漢方では未病の状態から病気を治すという考え方をします。

 たとえば、便秘や不眠、肩こり、肥満、むくみなどがあっても、痛みなどのはっきりした症状がないため、病院では病気と診断されない場合が多々あります。西洋医学では「健康」の中に入ってしまうこれらの状態を、東洋医学では未病、つまり半病人として考えるのです。明確な病名がない未病の状態でも、漢方では顔色や脈拍,舌などの状態を併せて診ることによって、どこに原因があるかを突き止め、漢方薬や針などで「治療」を施します。

 また東洋医学では、ときには異なる病気でも同じ漢方薬を使うこともあります。これを異病同治と呼んでいます。

予防医学と東西の融合

 未病を治すという考え方は予防医学そのものです。そのことは漢方薬の原料の中に、普通の食材と同じ原料が使われているものがけっこうある、ということからもうかがえます。

 たとえば山薬はヤマノイモ、大棗は果物のナツメ、紅花はベニバナが原料です。これらは食物が文字通り薬になっている例ですが、このことからも漢方と薬食同源の考え方が同根だということが理解できるでしょう。

 細菌やウイルスに感染することによって起こる病気は、前世紀から西洋医学が目覚しい成果を上げてきました。しかし一方、食生活やストレスなどから生ずる生活習慣病は因果関係も明確ではなく、これまでの悪い部分を直す考えから、予防医学的アプローチが注目されてきました。

 実際、西洋医学の先進国アメリカでは、1990年から米国国立がん研究所を中心にがん予防の疫学的な研究を重ね、デザイナーズフーズ・プログラムというものを発表しました。そこに挙げられている約40種類の「がん予防効果が期待される野菜や果物」の中には、漢方で古くから利用されてきた食材や薬の原料も多く含まれています。

 たとえば、最も重要度が高い食品にはニンニク、ショウガ、甘草、キャベツ、大豆、セロリ科植物(ニンジン、セロリなど)が挙げられています。食品の中には病気予防効果のある成分が含まれている、という民間療法的な考えを西洋医学が認め、予防医学として確立させようとしているのです。

 日本の病院や大学でも、漢方薬を取り入れて治療をする医師が増えており、今後、東西の医学の融合は進んでいくと思われます。


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